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じゃりン子チエ 第5話 「おバアのテツ救出作戦」



■お好み焼き屋のおっちゃん

大阪は粉モノの聖地です。
中でも人気なのは、タコ焼きとお好み焼き。
『じゃりン子チエ』では、第2話にでてきた百合根が改心してお好み焼きの店を始めたため、
お好み焼きを食べるシーンが頻繁にでてきます。

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百合根は初登場時はヤクザのオッサンだったものですから、チエちゃんも警戒してましたが。
おごってくれるというので、子供らしく素直に喜びます。


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この店ではアントニオの剥製が客を出迎えます。
そもそも百合根は、アントニオにお好み焼きのにおいを嗅がせてやる為に、この店を開店したのです。
アントニオのことを語りながら、手際よくお好みを焼く準備をしていく百合根。

お好みの材料 

さて、いよいよお好みを焼くときがきました。
混ぜ合わせた具を、鉄板の上に円を描くように落としていきます。


最後に重量感のあるイカがぼとりと落ちてくる描写がリアル。


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 劇中では、ここでハプニングがあります。
しかし、あまり気持ちのいい描写ではないので、それは後回しにして、
先にお好みを食べるシーンを見てみましょう。



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お好みが、ちょうど美味しそうに焼きあがったころ、ヤクザが店にやってきます。
百合根がバクチ稼業をやっていたせいか、開店直後の店はヤクザの溜まり場になってしまい、
百合根も商売に差し支えるので、これには困っているようなのです。

このときのヤクザ二人組は、のちにテツのパシリとなるカルメラ兄弟です。
カルメラ兄は、チエちゃんのために焼いたお好みをよこどり。

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劇場版では、ここでお好み焼きのアップのショットがくるのですが、
TV版ではなぜか、この舌なめずりするカットが新たに挿入されてます。

お好み食うカルメラ兄 
熱いお好み焼きをハフハフいいながら食べる様子が食欲をそそります。
熱いので一口では噛み切れずに、歯型がついているのが見えたりするリアルさ。
右手のコテでささえながら、左手の指で押し込んで食べます。
このとき使った人差し指と親指にはソースがついてしまうので、これも順に舐め取るという念の入った演出の作画。

機嫌の悪かったカルメラ兄も、美味しいお好みを食べて上機嫌です。
「おいおっさん 今日のは塩味が効いて美味いやんけ」


しかし彼は直後、お腹をかかえて苦しみだします。
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「さっきのお好み焼き腐っとったんやないけ?」
「アホいうな お前うまいうまい言うとったやないかい」


実はこれは食べてはいけないお好み焼きでした。
あまり触れたくなかったのですが、このお好み焼き。
なぜ塩味が効いていたのか、少し時間をさかのぼって見てみましょう。


時間を戻して、カルメラ兄弟が来店する前の店内です。

百合根はお好み焼きを焼きながら、イカ玉が好きだったアントニオのことを思い出し、
ついに辛抱たまらず泣き出してしまいます。

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涙と鼻水がいっしょになって、焼きかけのお好み焼きの上に・・・
チエちゃんはそれを目撃してしまうのですが、なかなか言い出せません。

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チエちゃんの無言の訴えにも気づかず、
丁寧にコテで伸ばして、うちわであおぐ百合根のおっちゃん。
・・・この時点でもう食えません。

さらに百合根のシャワーのような号泣が鉄板の上に降り注ぎ、湯気の幕が立ち上ります。

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「もうあかん ビチャビチャや」


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というわけで、これは食べてはいけないお好み焼きだったのです。
どうりで、チエちゃんも自分のお好み焼きをあっさり譲ったわけですね。

しかもこのお好みは、こけおどしではない危険なしろもの。
腹を抱えて苦しむカルメラ兄、ちょっとだけちびったみたいです。
熱消毒されてるにもかかわらず、腹痛まで起こさせる百合根のパワー恐るべし。


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「やっぱりあのお好み焼き・・・!」
チエちゃん、間一髪でした。




...おまけを読む (作品の感想と解説)
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じゃりン子チエ 第4話 「テツの薬はゴロンパー」



■チエちゃんの気前
  
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今日は大晦日。
こんな日も、チエちゃんの店はいつも通り営業していますが、店内も大晦日ムード。
帰省の話をしている客たちにチエちゃんが言います。

「おっちゃんたちに一杯ずつおごったるわ」
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「なかなかサービスええやないのチエちゃん」

「そのかわりまた来年もひいきにしてや」

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「わかってるがな チエちゃんの焼くホルモンは美味いしな」

足元では小鉄が空腹を訴えてます。
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「わしゃ腹減った なんかクレ」

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「小鉄 お前もうちの焼いたホルモン美味しい思うか」

売り物ですが、小鉄にもホルモンのおすそわけ。



思いがけずホルモンにありつくことのできた小鉄。
食べてるときの小鉄はとても幸せそうです。

 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

このシーンは、TVアニメ『じゃりン子チエ』のなかで、
私がかなり気に入っているシーン。
というのも、ここではチエちゃんが気前のいい商売上手に描かれているからです。

原作にこのシーンはなく、
のちに似たようなシーンはあるのですが、
そこでは商売上手というよりも、せちがらいぼったくりの店という印象さえうけます・・・
(そのシーンはあとで紹介します)


今回の気前の良いチエちゃんは、アニメのオリジナルであり、
作品のカラーに関わる重要な追加要素といえます。
そこにはチーフディレクターの高畑監督の意思が加わってるのではないかと思われます。




■ 親子三代・年越しそば


チエちゃんは今日が仕事納め。
店が終わるとさっさと片付けて、年越しそばを食べにおじいおばあの家に行きます。
親子水入らずで年越ししようと思っていたテツは、チエちゃんが実家に行くと知ってがっかり。
テツも呼ばれてるので仕方なく一緒に実家へ。

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置いていかれると気づいた小鉄が
「ワシも蕎麦食いたい」とニャーニャー騒ぎます。

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小鉄もヒモでつながれて、連れて行ってもらえることに。
小鉄は本来こんな扱いを受けて黙っているようなタマじゃないんですが、
蕎麦のためならとことん黙ります。
飼い猫が板についてきましたね。

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「おばあはん おいしいわぁ」
「そうかおおきに」

親子三世代揃っての年越しです。
お蕎麦をすする家族の輪に、小鉄が混じってるところがなんとも良い風景ですね。

しかし、その輪に入っていけない者が一名・・・。
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バツの悪そうなテツが、はじっこで紅白を見ながら蕎麦を食べています。
もともとテツは居心地の悪い実家には寄り付かない男なので、このお呼ばれにはかなり不機嫌。

テツが蕎麦を食べるところは、劇場版には劣るもののなかなか良い作画です。



「ちょっともうまない」

そりゃ肩身の狭い思いで食べる蕎麦は美味くはないでしょうね。
なんで肩身が狭いのかをいっぺん考えたほうがいいと思うのですが、考えたことがないからテツなのでしょうね。
「シラフでこんな生き方できるから怖いねん」というチエちゃんの鋭いセリフが思い返されます。


そんなテツはほっといて一族の団欒です。
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おつゆも飲んで

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「ごちそうさま」
綺麗に平らげてる小鉄が可愛いですね。
あれだけ食べたがっていた蕎麦を食べられてニコニコ顔。


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さてここでアニメオリジナルの追加シーンが入ります。
番組初期のこういう細かい追加描写は、ことごとく秀逸なので、
こういうところが高畑監督の仕事だと思われます。

チエちゃんとおばあがふすまの奥に消えると、
おじいが、この機を待っていたかのようにテツに話しかけます。

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「お前おかわりは」
「まずいけど食ったろうかな」
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おじいが自らおかわりをつくりに立ちます。

「なんでもいいからもう一杯くれ」と、これは中年男が親に向かっていう言葉じゃないのですが、
この父親は息子には甘いのです。
いわれるままにおかわりを用意しに行きます。

テツは育て方が悪かったと、チエちゃんがこれまた鋭い分析を作中でしていますが、
気の強い暴力的な母親と、気の弱い甘い父親。
テツというろくでなしは、このふたりの合作であるわけです。

その片棒である父親。
チエちゃんのおじいはんのテツへの甘さは、物語の冒頭からそうでしたし、
その後もことあるごとに描写されていますが、
この短い追加シーンからは、なんともいえない地味なリアリティで、この父親の甘さが伝わってきます。
「おかわり」というさりげない食の描写で、親子の関係を浮かび上がらせているところが絶妙ですね。

(追加シーンここまで)

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さて、ふすまの向こうでは、
今日仕事で来れなかったヨシ江はんが置いていった包みを開けています。
中身は手作りの服。チエちゃんのだけでなくテツの服もあります。

ヨシ江がつくってくれたオーバーとも知らず、はしゃぐテツ。

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「お年玉も忘れないでね」

強烈な四十手前のおっさん。
ヨシ江はんは、本当にこの男にはもったいない女性だと思います。



■ 風邪ひきのテツ


さて今回、テツは風邪をひいてしまいますが、
夢の中で寒気を感じています。

本能の塊のテツは、食べ物の夢を見ることが多いようですが、
こんなときでもやっぱり食べ物の夢。

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なぜか夢の中でテツは、裸で雪の中をさまよっています。
そこにでてきた暖かそうな風呂は、のぞくとからっぽ。

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浴槽の底で嫁と娘がコタツで鍋をやっています。
しかしテツはコタツに入れてもらえません。


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「チエーわし寒い死んでまう~」

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テツを置いたまま、コタツは宙に浮いて飛んでいってしまいます。
「チエーさむいー」
「ヨシ江ー待ってくれー」

テツの深層心理には、いつかふたりに愛想をつかされて捨てられてしまうという恐怖があって、
それがこんな形になって夢にでてくるのかもしれませんね。

そう考えるとヨシ江はんの家出は意味深です。
家出のきっかけは、テツが「出て行け」といったのをヨシ江が真に受けたかららしいのですが、
これも本当は気の弱いテツからすると、捨てられる前に捨てたるというやけっぱちな態度ではないのかと思えます。
このことはのちに出てくる花井拳骨が、テツとヨシ江の関係を語ったときの「コンプレックス」という言葉からも伺えますね。

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今回、テツが風邪で寝込んだのはかわいそうですが、
周囲はこれを好機とみて、夫婦が寄りを戻す口実に利用しようとします。
ヨシ江もこれには乗り気。

「そうや あれで根はええやつなんや」
落としどころを決めようとしている大人たちのうしろで、チエちゃんと小鉄だけが冷静に事を見ています。

「あんな甘いこというてるから傷つくねん」

そしてチエちゃんの読みどおり、今回の大人たちの期待はテツの裏切りの前にあっけなく崩れ去るのでした。
テツにはヨシ江はんの看病よりも、おいちょかぶのほうがよっぽど効くようですね。

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 ゴロンパー(568でカブ)


...おまけを読む (作品の感想と解説)

じゃりン子チエ 第3話 「激突!小鉄対アントン」



チエちゃんの家は、番組の初期では父子家庭でした。
お母はんがテツに愛想を尽かし家出していたのです。
しかし、お母はんとチエちゃんはテツの目を盗んでときどき会っているようで、今日がそのデートの日です。


■お母はんの巻き寿司

お母はんは、このとき初登場となりますが、
登場時からずっと抱えている包みが気になりますね。

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公園でボートに乗ったりと、ひとしきり遊んだあと、
いよいよその封印が解かれるときがきます。
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重箱の中には、チエちゃんの好きな巻き寿司がギッシリ。

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「わっ、バッテラもある」


両手に海苔巻きとバッテラを一個ずつ持って、食事を始めるチエちゃん。
このシーンでの動画の密度は異様なほどで、チエちゃんがかなり細かい動作をします。
そしてそれを異様と感じさせないさりげなさこそが、このシーンのすごいところでもあります。

 

口に入ったバッテラ寿司が、そしゃくするたびに右に左に動きます。
続いて海苔巻きです。



一度口に運びかけた海苔巻きを戻して、
会話を優先するチエちゃん。
芸が細かい演出です。



リアリティを追求し、何パターンもの口の形で表現したそしゃくだけでなく、
指についた米を唇ですくい取る様子までが丁寧に描写されます。
この間チエちゃんは、お母はんとの会話も同時にこなしながら、勢いよく食べていきます。

一方で、寿司には手をつけずうつむくお母はん。
元気なチエちゃんと対照的です。
店を手伝っているというチエの話を聞いて、娘を不憫に思っているのかもしれませんが、
それよりも、そんな娘をひとり置いて家出してきたことへの罪悪感があるのでしょう。

チエちゃんは、そんなお母はんの心境を知らずか、
美味しい巻き寿司を堪能して楽しげな様子。
続いて、卵巻き寿司に手を出します。

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ここでチエちゃんは不思議そうな顔でお母はんを見つめます。
娘が食べるのを見てるだけで、自分はちっとも食べないからです。

お母はんは「つくりながらいっぱい食べたからおなかいっぱい」と説明。



「あははつまみ食いや。うちもようやるねん」

チエちゃんは、卵寿司を食べながら元気よく笑います。

お母はんがつまみ食いしてきたというのは、本当かもしれませんが、
手をつけないのは恐らく、娘の好物を好きなだけ食べさせてやりたいという親心からじゃないでしょうか。
この笑顔を見たくて作ってきたお寿司のはずですからね。
娘がお腹いっぱいになったら、お母はんも残ったものを食べるつもりかもしれません。



※ 今回もいつもと同じように、イメージを伝えるために連続画像を使いましたが、
この手法では、シーンを分解して要所要所を解説することはできても、
このシーンの本当の素晴らしさは、実際に動いているところを見てもらわないと伝えきれません。
これまで紹介してきた他の作品でもいえることなのですが、この作品はとくに言っておかねばなりません。

ぜひこの素晴らしい動きをDVDで見てください。
このシーンと、次に紹介するぜんざいやホルモンのシーンは劇場版『じゃりン子チエ』に収録されています。




■お母はんとぜんざい屋で

劇場版ではぜんざい屋の前に、ゴジラの映画を観にいくシーンがありますが、
テレビ版では映画のシーンはなくなっています。

このシーンでも、劇場版とテレビではやや違いがあり、
テレビでは原作どおりの順番で小鉄が登場するため、劇場版よりもカット数が少なくなっています。

お母はんの迷っている姿が描かれているのは同じです。
先ほどの公園と同じく、暗いお母はんと明るく元気なチエちゃんの姿が対比的に描かれます。
そんなチエちゃんのぜんざいを食べるシーン。

原作では割り箸を割ったところで小鉄がでてくるので、食べるシーンは省略されてしまっていますが、
アニメでは食べるところをしっかりと描きます。


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そろそろ家に帰ろうかと思ってると娘に話すお母はんですが、
チエちゃんの答えは意外なもの。



チエちゃんは、ぜんざいのもちをぺろぺろと平らげながら、
「まだ会わんほうがええわ」と夫婦の仲をばっさり。
冷徹なまでのリアリズムが彼女の中を貫いているのがわかります。

そんな娘を不憫に思うのか。尊敬しているのか。
なんともいえない表情でみつめるお母はん。

ここで注目なのがこのカット。



最後のもちを箸でつまんだところで
カメラがチエちゃんの背後に回り込んだカットに切り替わり、
「背中で食べる」という見事な食事表現をみせています。


ドラマやアニメでは、食べる行為は普通はキャラクターを正面から捕らえて描きますが、
それも当たり前の話で、食事に使う器官‐口‐は、人間の正面についているからです。
正面から描けば、口にものを入れて噛むという表現のわかりやすさと、そこから生まれるダイナミズムを過不足なく得られるのですが、
この背面のカットでは、それら直接的な場面が見えない位置からわざわざ描くことで、逆に食べる行為の力強さを水増しして表現しています。
そしてそれは、主人公チエちゃんの力強さをも水増ししています。

同時に、この背中からのカットは、ふたりの関係を描くのにも一役買っています。
チエちゃんの力強い肩越しに母親の表情を捉えることで、弱い母親の正面顔にピントをあわせ、
さらには、チエちゃんにもピントを合わせてもいるのです。

このシーンでは、母親の弱さに対し、その弱さの犠牲になっているはずのチエちゃんの口から
大人顔負けの冷静な分析がでることで、母親が娘に対して感心するというか、
ある種、畏怖の念といえるような感情さえ抱くというシーンなのですが、
このときの正面からとらえたお母はんの目は、驚きとも悲しみとも、あるいは警戒ともつかない不思議な目をしています。
おそらくいろいろな感情が混ざっているのでしょう。
そして手前には、比較されるようにチエちゃんの豪快に食べる背中が。
お母はんの視線の先のチエちゃんの顔は、視聴者からは見えません。
見えないからこそ視聴者はチエちゃんの表情を覗きたくなります。

その期待に応えるかのように、ここで一度チエちゃんが顔をみせます。
お母はんが見つめていた大人の顔のチエちゃんです。
しかしすぐにまたその顔は見えなくなります。
チエちゃんがぜんざいの残りをかき込んだので、
顔がおわんの陰に隠れてしまいます。


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妙に大人っぽい一面を見せたかと思うと、
子供らしくぜんざいをかきこみ、口にあんこがついたまま
「ああ、おいしかった」と無邪気な笑顔をみせるチエちゃん。

このときのとびきりの笑顔が出現するまでのプロセスが、
「いないいないばぁ」の動作に似ていることも、決して偶然ではないでしょう。

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そんな娘をみるお母はんの顔もほころびます。
その顔はどこかしら、娘の子供らしさを発見して、安心しているところがあるようにも思えます。
そしてこのときのお母はんの気持ちは、視聴者の気持ちともシンクロしているはずです。



こういう多角的な意味と複雑な構造をもつ表現は、直感からは決して生まれないものだと思います。
逆説の論理や、数値の増減や高低の差し引きなどの計算が働いて生まれる心憎いカット。
そしてそのカットの連続によって巧みに誘導される視聴者の視線。
これこそは高畑勲の緻密な演出姿勢の産物なのです。



■アントニオの好物

この作品では欠かせないキャラクターであるアントニオジュニア(略称ジュニア)は、
作品初期にでてきた虎縞の猫アントニオの息子です。

生きているアントニオの出番は本当に短く、原作では1話限りしか出てきません。
あとは剥製として登場することになってしまうからです。

しかしテレビアニメ版では、アントニオの描写がいくつか増えていて、
このお好み焼きシーンもそのひとつ。
のちにアントニオは「お好み焼きが好き」という設定が原作のセリフがにでてくることから、
それを映像化したものと思われます。

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鉄板でお好み焼きを焼くアントニオ。
焼きあがったお好みを、コテを使って上手に切り分けていきます。

飼い主の百合根といっしょにお好み焼きを焼いて食べるその姿はまるで人間。
しかし所詮は猫ですね。最後はコテを使わず手づかみで食べています。




作品中では、不憫な扱いのアントニオですが、
せめてアニメ版だけでも、お好み焼きを食べさせてあげることができてよかったと思います。
ちなみにご存知の方も多いかもしれませんが、猫は四肢動物といって四本足で歩く生き物です。



■遊興倶楽部のカチコミ

食事シーンの多い『じゃりン子チエ』ですが、
その中でも、もっとも圧巻の食事シーンが拝めるのがこの場面です。
TV版にも劇場から転用されたこのシーンが遜色なく入っています。
原作にはこの食事シーンは省略されてしまってるので、これはアニメ版だけの見所。
そしてここでは、アニメーションの特性をフルに発揮した表現がされています。

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営業中のチエちゃんの店に、ヤクザたちがやってきます。
テツのバクチの借金を取りたてにきたのです。

チエちゃんには、テツが外で何をやってるかはわからないし、
あまり知りたくないのでしょうけども、いくら見ないフリをしていても、
こうして現実は向こうからやってきます。

かなりキツい状況ですが、チエちゃんは動じません。
それどころか、どこか他人事のようなチエちゃん。
現実を直視しないからこそ、今日を生きていくことができるのかもしれません。
それも彼女のたくましさのうち。

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ここでは厨房の裏側も少し描かれます。
客の残したホルモンを捨て、皿洗いをする描写も。
残り物のホルモンは小鉄にやったらいい気がしますが、
手で串を掴んで食うような猫ですから、残飯などには手をつけないのかもしれないですね。


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仕込んであるホルモンの串をガス台に置いていくチエちゃん。
その動作の描写が細やか。

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「なんか知らんけど ホルモン食べてもろたら うち儲かる」

いつのまにか、取立てに来た連中を相手に商売しています。
ちゃっかりしてますね。
そんなチエちゃんにすっかりペースをつかまれたヤクザどもの食事シーン。



まず百合根がひざに乗せたアントンとそっくりの食べ方をしています。
このふたりは登場時から顔とポーズがそっくりなので、食事でもそれを反映させた相似形の食べ方です。

しかし相似形のはずなのに、アントンだけホルモンを手で押し込む動作が一瞬加わっています。
これは「猫の口が人間より小さい」という些細な事実さえ見逃さない高畑監督の徹底したリアリズムが反映されている箇所であり、
ここは瞬時に流される箇所なだけに見逃せないポイント。




ホルモンに次々喰らいついていく男たち。
端からモリモリ食っていく者もいれば、
串からホルモンをまとめて引きちぎるように食べる者も。
あげく口に入りきらないので指で押し込む様まで描かれ、ホルモンの重量感を増しています。

口に押し込む動作は、先ほどのアントンの食べ方ですが、その必要のない人間にもわざわざ同じ苦行を課すことで
彼らの食欲や迫力を表現する演出として作用しています。
こってりしたホルモンに、濃い顔をした男たちが脂ぎった食欲を爆発させるような描写は暑苦しいことこの上なし。


このこってりしたホルモンをほおばった状態で、口にタレをつけたまま酒でガンガン流し込みます。
酒の減り方をみると、かなりのハイペース。
これが焼酎のストレートなら急性アル中になりかねない飲み方です。

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奥でもりもり食ってる手前に、チエちゃんが酌をする酒瓶が割って入ります。
これらのカットが畳み掛けるように見る者を襲ってきて、実に迫力満点の食事シーンです。




テツを待つ間にさんざん飲み食いして、すっかりできあがってしまった遊興倶楽部の面々。
これからあのテツを相手に大立ち回りをするには少し油断しすぎの気もします。


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借金取立てに来たヤクザのくせに、律儀に飲食の代金を払ってしまう百合根。
悪漢にはなりきれない人のようです。

この直後に大きなハプニングがあり、百合根の人生は大きく変わることになります。



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