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「ひとりだけの部屋」

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短編アニメ 『ひとりだけの部屋』
作者:野山映
ホームページ:花蟲 - Hanamushi - (http://hanamushi.jp/


今回はFLASHを使った短編アニメーションを紹介したいと思います。
といっても、作者は私の個人的な知り合いなものですから、これまで扱ってきたTVや劇場向けの商業作品とは趣向が違っていて恐縮なのですが。
この作品は昨年度の文化庁メディア芸術祭にて、短編アニメーションの部門で審査委員会推薦作品のひとつに選ばれたので、個人制作のアニメーションではあっても、どなたが見ても納得のいく質をもった作品であるという自信を持って紹介したいと思います。

 【あらすじ】

映像主体の10分程度の作品ですが、きちんとストーリーがあり、見ているうちに映像とともに物語の世界に引き込まれることだと思います。
物語は鳥の頭をもつ少年が、部屋の中から脱出しようとするところから始まります。

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脱出を試みようとするが、部屋からは出られない

少年はいつしか脱出を諦めて、この閉鎖された部屋の中での暮らしに順応していくことになります。

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だんだん成長していく少年

幸い、部屋の中には、住人が退屈せずにすむように用意された書物やTVがあり、少年はひとり本を眺め、チャンネルをひねってTV番組を見たりしては果てのないようにも思える時間を過ごすのですが、どうにも寂しさだけは堪えることが出来ません。

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怪奇な映像ばかりが写るTV番組

やがて、本の中からヒントを得た少年は、あるアイデアを実行することになります。

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人形のピノキオが人間になる物語を読んだ鳥少年は・・・



ここから先は若干ネタばらしになるので、未見の方は先に見てしまうのも良いかと思います。
YouTubeで動画を見れるようになっています。

    YouTube -短編アニメ「ひとりだけの部屋」


─ FLASHの特性とFLASHアニメ事情 ─

FLASHアニメは、従来の手書きの2Dアニメと違い、登場人物の体の分割されたパーツをそれぞれ別に描き、それらのパーツをつなぎ合わせて、各パーツをモーショントゥイーンという機能でそれぞれ動かすことで体全体に動きをつけていくのが基本的な使い方です。
デジタルの紙人形劇、あるいは紙人形を使ったパペットアニメーションのようなものだと思えば良いでしょう。
(※タイムライン上に違う絵を配置してパラパラ漫画(フレームアニメーション)のような連続描画もできますが、フレームアニメーションのみの描写はFLASHの得意技ではありません)

※ 下の画像は、同じ作者のFLASH作品のswfファイルから
 実際に画像を抜きだしてバラバラにしたパーツ

flash parts 紙人形形式のアニメを作ろうとしたとき、FLASHでは同時に動かせる関節の数に制限もなく、1コマごとに撮影をする手間も要らないので、パーツごとに細かい演出の指定をできるFLASHでは、格段に表現できる幅が広くなります。
同様の表現をするには、もっとも向いているツールだといえると思います。
そのため、一時期はWEB上で作品を公開することを前提とした個人制作のアニメーション媒体としてFLASHは流行しました。
中には『秘密結社鷹の爪』など、WEBを飛び出してTVアニメや劇場映画になってしまったものまであります。

ですが、もともとFLASHはWEB上で動作する軽さが最大の特徴なので、本来は軽いベクター描画の(データ量が少ない)あっさりした画風のアニメーション作りにもっとも適しています。

この「ひとりだけの部屋」のような重厚な表現は、ラスター描画(ドットの集まりで描かれるためデータ量が多い)でしか不可能なので、閲覧側のマシンスペックに依存するWEBアニメーションとしては不向きになってしまいます。


近年では動画投稿サイトが普及したこともあり、インタラクティブ要素を備えた作品以外ではFLASHでWEBアニメを作ることの優位性はなくなってきているのが現状です。
今後はこの作品のような重厚な表現を狙った作品作りの場はAfterEffectsなどのツールに統合され、FLASHアニメは廃れていく方向にあるようです。

それでは、このようなFLASHアニメの基本を確認したうえで、実際の作品内の食事シーンを見ていきます。



■ FLASHアニメの食事シーン

この作品のタイトルは『ひとりだけの部屋』ですが、作中には少年のほかにもう一人の人物が登場します。
それは少年と同年代と思われる少女です。
少女は少年と同じように、部屋の脱出を試み、やがて諦め永遠とも思える無為な時間を過ごします。

ふたりは生きている人間ですから、「生活」をすることになるわけですが、その生活に必要最低限の設備の描写は背景画の中に提示されています。
部屋には食事と水道と、それに排泄のためのトイレが備え付けてあります。
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トイレ用ブラシをとりあげる少年。なにに使うのか…

食事はすべて缶詰。
壁には料理用の器具もかかっていますが、火はつかえないようです。

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ジュークボックスの中から出てくる缶詰

周囲にはまだ未開封の缶詰も転がっているのですが、その缶詰の絵柄は魚だったり虫だったりします。
少女はそれには手をつけず、ジュークボックスに近づきます。


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床に転がる妖しげな缶詰… 誰が食べるのか


少女がボタンを押すとジュークボックスからランチョンミートの缶詰が出てきます。
作者はランチョンミートのSPAMが好物なので、このあたりはそのまま作者の食の嗜好が作品に出ているのがわかって面白いです。

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フタを開けると、盛り上がって飛び出してくるランチョンミート。
にょきにょきと枝が生えるように増殖し、それを少女は恐る恐る食べてみます。



食事という複雑な描写は紙人形アニメでは不向きな表現といえそうですが、この作品では、その不得手な特性を上手に生かして表現として昇華していると思えます。

その表現は、動画を使った一般的な手描きのフレームアニメーションとは、まるで違った方法論で成り立っていますが、アニメーションの醍醐味は、絵が動くことでキャラクターに命を吹き込むことですから、
総合的な技の集大成でキャラに命を吹き込むFLASH作品にも、アニメーションとしてのカタルシスが存在します。

010906 「ゴクリ」と音を立てて水を飲む鳥頭の少年。
水を飲み下すとき目は閉じている。


この作品は他のシーンでも、キャラクターの存在感を表現するために、まばたきや体や頭の動かし方で、キャラクターに命を吹き込んでいます。
この動きのフォーマットが完成しているので、中盤以降にでてくる食事表現においても違和感は感じずに、逆に印象深いシーンとして目に刻み付けられることだと思います。

このときの少女の顔をみると、下あごは別パーツで描かれているので咀嚼(そしゃく)にあわせて動くことができますが、
アナログの紙人形とちがってデジタル表現では別レイヤの情報も一枚の融合した絵として表現できるので、下顎が別パーツになっていることを違和感なく隠せます。
自然に動く下あごと、さらに舌のパーツ素材を奥に配置することで、口周りを表現。

それらとまばたきなどの動きを組み合わせ、最後に耳障りといえるくらいに強調された「クチャクチャ」と鳴る咀嚼の音をかぶせることで、「食事」という行為の表現に達しています。

・鳥少年の食事

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少年の開けたのは木の実の缶詰。
フタを開けると、少女のときと同じように、にょきにょきと枝が生えてきて実をつけます。
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肉には目もくれず果実を食べる少年。さすがは鳥です。


■エロティックな要素

このときの少女の食事シーンですが。
少女はまず、枝のように伸びたランチョンミートを舌先でぺろりと舐めて味を確かめるのですが、この描写にはエロティックな意味合いが込められていると思って間違いないでしょう。
暗喩というよりはむしろ、直截的なエロティック表現というべきかもしれませんね。
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他には、水道からでてくる異形の生物にはエロティックな意味があるそうです。

少年が蛇口をひねったときに水道からでてくる魚卵のようなものと、少女が蛇口をひねったときにでてくるオタマジャクシは精子と卵子の暗喩だそうで、思春期を迎えたふたりの欲求不満を表しているとのことです。
そう思って見てみると、蛇口の下にぶら下がってる袋は人間の陰嚢にしか見えなくなってきます。

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イクラのような卵とオタマジャクシが変形して生物になりかけて消滅する

このブログではこれまでも繰り返し書いてきましたが、性と食と睡眠は生物として持ち合わせた同列の欲求です。
本当は生きていない絵空事のキャラクターに命を吹き込むためには、この三大欲を描くことが効果的であり、絵に描いたキャラクターを真剣に生かしたいと考えた創作者ならば必ずたどり着く方法論だといえます。

作者の野山氏は、私と同じく伊丹十三のファンであり、藤子・F・不二雄の熱心なファンでもあります。
このブログでも触れた伊丹十三の『タンポポ』は食のフェティシズムを描いた映画です。
藤子・F・不二雄のSF漫画には『気楽に殺ろうよ』という短編があり、そこでは性欲と食欲の価値観が入れ替わった奇妙な世界が描かれました。
私がこのようなブログで食とアニメの話を延々としているのも、彼がアニメーションの中にこういった描写を縫いこめるのも、似た趣味が高じた結果だといえそうです。



今回は短編アニメの最新作『ひとりだけの部屋』を紹介しましたが、
作者(野山映)は、これまでにも、いくつかの短編アニメーションや、FLASHを使ったゲーム作品を発表しています。
ホームページに行けば一通り見れますので、興味のある方はぜひ覗いてみてください。

ホームページ:花蟲 - Hanamushi -
http://hanamushi.jp/

YouTube - 短編アニメ「ひとりだけの部屋」
http://www.youtube.com/watch?v=_5i4pwXEzfQ


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ヒャッコ 第10話 「15コメ・虎に翼」


■落としの弁当

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屋上で本を読みながら昼食をとっているメガメっ娘。
風茉莉冬馬(かざまつり とうま)は、誰にも邪魔されずひとりで静かな時間を過ごすのが好きなのです。
しかし、今日は口から飲みかけの牛乳をたらし、かじりかけのパンを持ったまま固まってます。
前方のなにかに驚いているようなのですが…

…その前方には、騒がしい一団が。
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宿敵虎子が、秘策と仲間とを携え、今日も今日とて冬馬を懐柔しにきたのでした。

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虎子と冬馬の小競り合いの様子は
第3話あたりからそれとなく描かれてきた


虎子が、冬馬にちょっかいを出し続けて数ヶ月。
いっこうに自分になびかない冬馬を、なんとか自分に振り向かせようと虎子は必死です。
今回は、手下を引き連れ数で圧倒した上に、食べ物で釣る作戦なのです。

エサは”手作り弁当”。
これは、いつも菓子パンだけで食事を済ましているという冬馬の食生活を調べ上げた上での選択です。
なんだか腕の良い釣り師が、魚に合わせて餌や釣り糸の種類を変えている様子が思い浮かびます。

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肝心の弁当は虎子ではなく、歩巳の作。
今回は虎子のちょっかいだけでなく、歩巳からも横から友達光線が照射されています。
すでに虎子の配下となっている歩巳という駒を最大限に使って敵の将を仕留めんとする策士虎子。
こうして冬馬は、肩肘を張ってみせながらも、虎子の張り巡らした二重三重の罠にからめとられていくのです。

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ここは原作では、余計につくってきたおかずのみを入れたミニ弁当箱でしたが、
アニメではご飯も入った弁当になってます。

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なぜかここで、雀が横からおかずを盗んでいきます。
雀の大食いキャラの意地汚さがでたということもできますが、
これは頑なに他人との交流を拒んできた冬馬が、弁当で懐柔されるまさにその瞬間に起こった出来事ですから、
ここは親友虎子が関心を向けている相手への嫉妬からでた嫌がらせだと考えたほうがわかりやすいと思います。

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そして、いつのまにやら弁当に箸をつけてしまっている冬馬なのでした。
その裏に潜む意図を見抜く能力を、おいしそうな見た目とおいしそうな香りが奪ってしまっているのでしょうか。

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なんだかんだで仲間の輪に溶け込んでしまっている冬馬。
恐ろしい作戦は成功のようです。
箸をつけた時点で勝敗は決していましたね。
食い物の魔力は恐ろしいです。


■弁当披露会

今回、番組終了間際に弁当つながりのミニコントがあります。
原作のコミックス収録の2ページ漫画を膨らませたものです。

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このミニエピソードは、クラス委員長が全員を集めて、弁当の見せ合い大会を開くという趣向になっています。
これまでに登場した個性的なキャラクターたちが、それぞれの特性を出した弁当を見せ合います。
値段とカロリー計算がついているというところがアニメならではの演出です。

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コンビニ弁当。
独楽(こま)は親に代わって小さい弟と妹の面倒を見ています。
副業も抱え金儲けに忙しい彼女は、昼食はコンビニで済ますことで時間を作っているのでしょう。

                       
菓子パン二個。
潮は風貌に似合わず甘いものが好きです。
表示をみてもわかるようにコンビニの菓子パンは非常にカロリーが高いものです。
成人女性の一日の摂取カロリーは2000キロカロリーといわれていますから、これ以上は食べすぎでしょう。

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肉まん5個。
ロボット研究会に所属する知恵は、昼休みを活用してロボット制作をするつもりです。
その合間に片手で食べられるという理由でこの食事。

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お菓子です。
頭の中がすっかり幼児の湊兎(みなと)は、食べたいものを食べたいだけ食べます。
だから昼食もお菓子です。
それは食事じゃないという委員長のツッコミには、叱られたと思って泣き出してしまいます。

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祈(いのり)の手作り弁当は、母親の作ってくれたものです。
食べる本人には似合わない、なかなか可愛らしいお弁当ですね。
原作では「手作り」と聞いた一同が、その祈の風貌から「毒入り」を連想するというオチになっているのですが、
アニメでは若干変えてあります。

ごはんの上に星の形のそぼろのようなものがのっていますが、
以前、これもアニメオリジナル要素ですが、祈の母親の手作り金平糖をもってきたという描写から、
祈の母は星のようなキラキラしたものを好む明るい人物だということが想像できます。
原作に登場した祈の妹も普通の人なので、彼女だけがなぜか暗い性格なのでしょう。
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さて、祈のお弁当の行方が最後に描かれます。
このお弁当は虎子に奪われてしまったのです。

職員室では空の弁当箱を虎子に渡す傘(あまがさ)先生の姿が。
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先生のケータイを壊してしまった虎子は、その埋め合わせに、祈の弁当を差し出してこの件をチャラにしようとしたというわけです。

今回このブログでは、虎子の性格を、若干計算深い利己的な悪女のようにおもしろおかしく書きましたが、
この弁当箱の描写をまともに取り合うのならば、虎子は無意識のレベルで本当にそういった性格を隠しもっているとも思えます。

アニメ版の最終二話のあたりで描かれるシリアスなエピソードのことを考えると、原作の時点で虎子の隠し持った性格のことを匂わせる描写はすでにあるように思えるのですが、このオリジナルの描写を見ても、アニメ版ではそのことをわざと強調して描いているのかもしれませんね。

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他人の弁当をとっておいて「サンキュー」の一言で片付ける虎子
笑顔の祈のリアクションがさらに怖い



...おまけを読む (作品の感想と解説)

2010年元旦

謹賀新年
2010年賀イラスト

今年は『ノエイン もうひとりの君へ』の年賀イラストです。
まだこのブログでは扱っていませんが、今年はこの作品を紹介できたらと思います。



このブログを始めて3年たちましたが、 開設当初に考えていた作品のほとんどをとりあげることはできませんでした。

さらに去年は更新回数も極端に減り、ブログの体裁を保つのも難しいくらいの更新ペースでしか語れませんでしたが、
『じゃりン子チエ』の高畑演出回については、自分なりに語りきることができたと思うので、その点には満足しています。

この更新ペースでは、これから先どれだけの作品を扱うことが出来るかわかりませんが、
無理をせずがモットーなものですから、広く浅く扱ってみるのもいいかなと思っています。

とにもかくにも、今年も『あにめごはん』をよろしくお願い致します。



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