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ヒャッコ 第4話 「3コメ 牛飲馬食虎食・6コメ 虎は虎連れ」

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学園コメディ作品、『ヒャッコ』です。
毎回演出的に非常に凝った事をしている作品なので、食事シーンにもこだわりが見られます。

第4話には学生食堂のエピソードがあるので、まずこの回から紹介します。


■学園の昼休み

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本作のヒロインである虎子が、昼時に教室を見回しています。
どうやら他人の昼飯が気になっている模様。

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家から弁当持参の者もいれば、買った弁当の者も。

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購買部のパン。

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これは輪ゴム止めで包装がないので仕出し弁当に見えます。
この学園の購買部では弁当も買えるようです。

『ヒャッコ』では主要登場人物が揃うのに時間がかかり、一人に1エピソードを使って紹介していくので、まだこの時点では視聴者が見知らぬキャラクターが多くいます。
のちにメインを張るようになる彼らも、この時点ではその他大勢にまぎれて食事をしています。

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彼女は、虎子との出会いがのちに詳しく語られることになる冬馬です。

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虎子が覗き込むと弁当を隠してしまいました。
なにか因縁めいた関係を感じさせる仕草。

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一通り教室を見渡した虎子は、購買部でパンを買うという歩巳(あゆみ)を強引にひっぱって学食へ行きます。
歩巳はこの物語の狂言まわしの位置にいるキャラで、第一話では彼女の視点のモノローグから始まっています。
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この「手をひっぱる」というカットが登場するのは第一話に続いて二度目ですが、原作ではあっさり流したこのカットを、アニメでは透過光などのエフェクトや多めの動画を使って印象的に描いています。
ここは演出上、大事な箇所だったのでしょう。
というのも、この手をひっぱる動作は主人公の虎子というキャラクターを象徴しているように思えるからです。

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第一話での手を引っ張るシーン。以降歩巳は虎子に文字通りぐいぐい引っ張られていく。

ヒャッコの登場人物たちには引っ込み思案なキャラクターが何人かいますが、
彼女らは皆何らかの形で、手を引っ張られていくかのように主人公虎子の生活圏に巻き込まれていくのです。


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冬馬は、騒々しく学食へ移動する虎子たちを横目に黙々と弁当を食べています。
彼女もあの「手」の感触を知っているようなのですが・・・



■ 学食風景

自然の光彩を取り入れた広々とした学食。
主要キャラの姿は学食の風景の中にもちらほら見れます。
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第8話でその怪しい実態が描かれることになる蕾家祈(つぼみやいのり)。
食事の様子もひたすら陰気です。

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学食で生徒に混じってそばを食っている教師がいます。
彼は虎子たちの担任の傘叶一狼(あまがさ きょういちろう)。
汁を飲み終えると、そのまま自然な動作で胸ポケットのタバコに手が伸びます。
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しかし学食は禁煙。
火をつける寸前にカメラ少女独楽(こま)にみつかって注意されます。

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その向こうでは第3話にでてきた学級委員長がスパゲッティの皿を持って歩いていきます。

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食券売り場では、第9話で虎子達を窮地に陥れることになる湊兎(みなと)が券売機の前でオロオロしています。


■ もう食べられない…


いよいよ虎子たちに食券を買う順番が回ってきました。

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歩巳が食券を買おうとすると、虎子が大盛りのボタンをいたずらに押してまいます。
歩巳は大盛りの月見そばを食べるはめに。
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画面を文字で装飾するのは、原作漫画の『ヒャッコ』に多く見られる演出です。
大盛りだから「盛り」です。
文字は言霊。盛ってる感じがダイレクトに伝わってきますね。
ちょっと卑怯な手法に思えてきました。

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しかし歩巳は大盛りに恐れをなして、なかなか箸をつけませんね。
どうやら彼女は小食のようです。

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こんなに食べられないと泣く歩巳に付き合って、虎子も大盛りの天ぷらそばを注文しますが、
二人とも揃って小食だったものですから、うんざりする顔がダブルで見られます。

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ここは笑うとこです。

本来、アニメにおける「食べ物」は視聴者の食欲をそそる描写がされるものであり、
食べ物そのものの描写に加えて、食べ物に対峙する登場人物の食欲を描ければ、
画面の中の登場人物はその一瞬だけ視聴者の経験とシンクロし、生身の人間がそこに存在したかのような錯覚を生み出す効果があると思います。

テレビの前の視聴者が、仮にそのときお腹が一杯だったとしましょう。
もしアニメフィルムが、お腹一杯の視聴者をフィクションの世界に引きずり込んで、その食欲を呼び起こすことができればその食事シーンは完璧です。

このシーンでは食欲とは逆に、お腹がいっぱいになった様子が描かれています。
食事をして腹がいっぱいになれば、食欲は満たされ幸福な気持ちになるわけですが、
必要以上に食べてしまった場合は、食べ過ぎで気持ち悪くなってしまいます。

ここで描かれた満腹で苦しむキャラクターの姿は、食欲とは正反対に位置する描写ですが、
これも視聴者の生身の経験を呼び起こす装置としては、食欲と同等の効果をもたらすはずです。
いかに食べ物に対してうんざりしてるか。
それを描ければ、アニメの登場人物はより一歩人間に近づくことでしょう。

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「もう食べられません…」

この場面では、コミカルな筆致ながら、死んだような目()がポイントが高いと思います。
もし、空腹でしょうがない視聴者にゲップがでるような思いをさせることができれば、
それが究極の「おなかいっぱい」の描写だといえると思います。

※小さな画像ではつぶれてしまっているかもしれませんが、黒目の部分は漫画記号的表現で水平の線の集合で描かれています。
原作でもこのシーンは同様の漫画記号で目が描かれているのですが、
アニメのこのカットでは、目の上下の線を長めに描くことで、遠めに見ると黒目が出現するという作画になっていて面白い表現だと思いました。


■ 女の子らしく蕎麦を食べる


さて、「大盛り」と「おなかいっぱい」のシーンを、合わせて先に紹介しましたが、
時間を少し巻き戻して、食欲をそそるほうの描写を見てみましょう。

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基本ストレートな麺に若干かかったウェーブがリアル

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箸先から上る湯気も臨場感たっぷり

ヒャッコでは演出にちょっとしたひねりが入れてあることが多く。
このシーンでも、蕎麦を食べる描写において、ひねった表現がしてあります。
ここでは食べる瞬間の口元をわざと描かずに、
吸い込まれいく蕎麦の動きを描くことで食事を表現しているのです。



しずくを残して画面上方に消えていく蕎麦。
最後にちゅるっと麺が吸い込まれていく口元が描かれます。
吸い込まれていく最後の一本の波打った軌道が、弾力を持った蕎麦の美味さとそれを吸い込む口のなまめかしさを同時に強調しているように思えます。



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「あ、おいしい」

実に女の子らしいですね。



■ 女の子らしくなく蕎麦を食う

歩巳の女の子らしい食べ方に感激した虎子と雀は、おかえしに自分たちの蕎麦の食べ方を披露します。

「あたらしらなんかがさあ、蕎麦食ったりしたらさあ!」

まず割り箸は勢いよく割ります。
左右を均等の長さにもって、綺麗な形に割れるようにしているところが粋です。
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バッ
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キィ!!

続いて荒々しくどんぶりを掴む左手。
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ガッ!

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小気味よくしぶきをあげて麺が宙に踊ります。


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「こうなっちゃうんだもんよー!」

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「うめー!」

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勢いあまって手前に大海原が現れ、なぜか大漁旗を掲げた漁船が通りかかります。
虎子はこのとき「これが和の心意気ってもんよ」とよくわからないことを豪語してますが、虎子の心象風景ではこの漁船こそが「和の心意気」なのでしょう。

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背景に砂塵をまきあげておののく歩巳

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テンションの上がった虎子は、そのまま対面の席の龍姫(たつき)の食べていたスパゲッティに箸を突き立てます。
しかも「ひとりスカして洋風なもん食ってんじゃねえぞ!」というひどい理由。


皿の上では修羅場が繰り広げられていますが、このとき
割り箸でくるくると、コイル状に巻き上げられていくスパゲッティの踊るような螺旋が美しいです。
しかし割り箸にかっさらわれる直前で麺にフォークが突き刺さりました。

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龍姫もまけじと麺を死守します。
『ルパン三世 カリオストロの城』でルパンと次元がスパゲッティを取り合う場面が描かれましたが、それを髣髴とさせる描写ですね。

洋風なものは許さない。
ここまでが虎子の「女の子らしくない和風の蕎麦の食い方」です。
非常に迷惑です。



■ 端役の食事描写

このカットも凝っています。
ここは虎子達の会話のシーンなのですが、カメラはその会話する彼女らを直接捉えることなく、
その他大勢のモブキャラクターの食事風景越しに描いているのです。


向かって右の男は麺をすすり、左の男は汁を飲んでいます。
本来なら風景と同じ扱いのはずのモブキャラクターをわざわざ手前に配置して、
丁寧に食べる演技をさせています。
この間、あくまでカメラのピントは奥にいる主要キャラクターたちにあっています。



■ 大食い雀


さて話の順番が前後してしまいましたが、
先ほど紹介したように、虎子と歩巳のふたりは、そろって蕎麦を食べ残します。

食べ物を残す描写はあまり気持ちのいいものではありませんね。
でもこの作品にはそのような心配は無用。
残飯処理係がいるのです。

虎子の幼馴染で、彼女の横にいつもべったりくっついている雀(すずめ)は、大食いキャラです。
この学食のエピソードはそれが判明する話でもありました。

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蕎麦の残りを雀に差し出す虎子。
雀の横に「完食」と書いてあるのは、自分の食事をもう平らげてしまってることを表現しています。

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ちなみに直前に彼女が完食しているのは、きつね蕎麦大盛り(おにぎり二個つき)です。


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時間経過を表現する舌なめずりのインサートカットが入りますが、
画面が切り変わると、虎子と歩巳の食べ残した蕎麦もすでにきれいに平らげてしまってます。
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雀はこのあとさらにカツ丼を食べて、皆をひかせます。
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以降、雀の大食い描写は直接食事描写としては描かれることがなく、
「大食いキャラ」として記号的に流されてしまっているのが残念です。




...おまけ(作品の感想と解説)

ヒャッコ
ジャンル学園コメディ
漫画
作者カトウハルアキ
出版社フレックスコミックス
掲載誌FlexComixブラッド
発表期間2007年1月16日 - 連載中
巻数4巻 以下続巻
アニメ
原作カトウハルアキ
監督福田道生
脚本富沢義彦
キャラクターデザイン太田恵子
アニメーション制作日本アニメーション
製作ヒャッコ製作委員会
放送局テレビ東京系
放送期間2008年10月1日 - 12月24日
話数全13話
コピーライト表記cカトウハルアキ・フレックスコミックス/
「ヒャッコ」製作委員会

( ヒャッコ - Wikipedia より)



原作漫画が掲載されているFlexComixブラッドはYahoo! JAPANが運営するウェブコミック雑誌で、紙を媒体としないインターネット上の雑誌で連載されている作品のアニメ化という点が新しいです。
そんな特殊な背景を持つ作品だったせいか、アニメ版『ヒャッコ』は深夜2時台後半という目立たない時間に放送されました。

オープニングとエンディングの映像が放送に間に合わず、即席のバージョンが全13話のうち第8話まで流れていたり、
最初の2話の放送時点でインターネット上の評判がかなり悪く、スタートダッシュに失敗したまま、あまり話題になることなく終わってしまったりとなにかと不遇な作品でした。
評判の悪い第2話はたしかに全体の中でもかなり粗が目立つ異色な回で、作品のよさが悪い方向に空回りしてしまった不幸な回だったと思いますが、作品全体を通して見ると監督がしっかりとコンセプトを持ち表現にこだわって制作された優良なアニメ作品だったと思います。
これからDVDなどで見る人は、そのことを頭に入れてもらってから見て欲しい作品です。
■コミカルな演出

hyakko03-02 (第三話より)

『ヒャッコ』の特徴は原作漫画の力を別とすると、なんといってもその個性的な演出の魅力が挙げられます。
アニメでは、コメディ作品の長所を生かして、これでもかという盛りだくさんの工夫をしています。
ワイプや画面分割といった古典的な手法から、背景に記号や文字やイメージ画を多用した実験的な手法を使った面白みのある画面構成で、にぎやかな作品世界を築いています。

さらにエフェクトやバックに流される怪しい音声が加わり、緩急を意識的につけたテンポや間とあいまって、一種独特の世界ができあがっています。
これらの要素が原作の持つギャグの魅力と合わさって個々のネタのよさを生かしているのです。
hyakko04-104hyakko04-13 
第四話後半の美術の授業で描かれるスケッチ
ありえない鬼瓦顔とそのリアクションの間が絶妙

hyakko03-04
第三話にでてくるメカ虎子
シュールなギャグが演出で生かされている


■ 光と影の織り成す世界

『ヒャッコ』の魅力はコミカルな部分だけではありません。
この作品は、画面作りにおいて光彩を非常に意識しています。

光あるところには影がある。
光を描くために『ヒャッコ』では暗くなった陰の部分を強調して描いています。
この陰は、ほとんど黒くつぶれてしまってるような強い陰の場合が多いです。
陰を描くことにより、そのコントラストから光彩の鮮やかさがよりいっそう際立っています。


hyakko03-01 (第三話)
朝の光が入射光として手前に射しこむカット。

hyakko04-100 (第四話)
これは美術室ですが、廊下など、
窓から射す光の表現は基本です。

hyakko04-01 (第四話)
明るい空と暗い屋根が同居する”渡り廊下”も非常に多用されるモチーフ。

hyakko01-01 (第一話)
誰もいない教室。
あまりに強いコントラストによって室内は真っ黒くつぶれてしまってますが、
EDに流れるこのシーンのストーリーボードを見ると音楽室だとわかります。

hyakko01-03 (第一話)
中庭に面する通路。ここも外と内の境目の場所。


今回紹介した学食のシーンにおいても、この「光彩」は意識的に描かれています。
hyakko04-85 (第4話)
外側から描かれた学食。
明かり取りの窓を大胆にとった建築。

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内部から外の景色は描かず、窓の外はまっしろに飛んでいる。

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暗いキャラは窓から離れた位置に。



■青い空と流れる時間

hyakko04-83 

凝った趣向が盛りだくさんのにぎやかな作品ですが、
私は『ヒャッコ』の最大の特徴はこの「青い空」だと思います。
これは光彩のコントラストと密接な関係があり、
学園の外の世界が描かれるときは、必ずといっていいほど青い空を強調したカットが多用されます。

空には屋内と違って、遮るものが何もない光の世界です。
そこでは、ただひたすら青い空と、白い雲が漂っています。
ゆったりと流れる雲が現しているのは、ゆったりと流れる時間。

『ヒャッコ』は30分番組の中で、それ以上の長さを感じさせる濃密な時間を経過させています。
ほぼすべてのシーンに途切れることなくBGMが流れ、空が描かれるようなゆったりとしたシーンにはギターのつまびきがかぶさります。

hyakko04-84
さりげなく挟まれるカットで
ゆったり流れる時間が表現されている


こういった細やかな積み重ねの中に生まれる「時間」。
コメディのにぎやかさと双璧を成すように存在する穏やかな時間こそが、ヒャッコの最大の魅力だと私は考えています。
このにぎやかさと穏やかさという両極の表現のコントラストは、光と影が互いを強調しあう関係にも似ています。
 

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