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ヒャッコ 第5話 (Bパート)「5コメ 人には沿うてみよ、虎とは闘ってみよ」



『ヒャッコ』のヒロインである虎子は、活発というより暴力的なキャラクターですが、
この作品には粗野で暴力的なキャラクターがもう一人います。
第5話の後半「5コメ 人には沿うてみよ、虎とは闘ってみよ」は、コンビニで出会った粗野な二人が、学校をサボる話です。
こんなふたりの組み合わせですから、副題にもあるようにバトルシーンもあります。



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手前の女の子は幕之内潮(まくのうちうしお)。
彼女はハードロックの趣味があるせいなのか校則を逸脱したファッションをしていますが、
そのために虎子にヤンキーと呼ばれてつきまとわれます。
この時点でふたりとも学校をサボってます。

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格闘技アニメのような大立ち回り

カラオケ店でさんざん大喧嘩してエネルギーを消耗した彼女らは、
なぜか仲良く連れ立ってコンビニで飯を調達します。
相性がいいのか悪いのかわかりません。

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コンビニは今朝二人が出合った場所でもあった


コンビニで買い物をしたあと、運動場への降り口の階段に腰掛け、食事を始める二人。

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このとき、ロングショットとクローズアップの両方を駆使して描かれるコンビニのポリエチレン袋が印象的です。
ロングの場面であっても人物の動きを省略することをせず、
袋の中をあさって中身を取り出し、残りの商品の入った袋を脇に置く動作が丁寧に描かれています。



カラオケでお金を使ってしまって、もうあまり持ち合わせがないといっていた潮ですが、
コンビニで買ったのはプリンだったようです。

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「お前プリンとか食うの?」
「好きなんだよ甘いの」
「ヤンキーなのに・・・」
「ヤンキープリン食っちゃだめなのかよ」

このしょーもない会話がヒャッコらしくて良いですね。
それはともかく、潮がプリンを食べるところを見てみましょう。

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ラベルをペリペリはがすと、甘くて黄色いプリンの表面が現れます。
人懐っこい笑顔を見せこちらに挨拶をしているかのようです。
このつるつるでニコニコ顔のプリンにスプーンを突き立てるときの背徳感。
そして弾力のある塊を掘り起こすときのほどよい抵抗がプリンの魅力の2割くらいは占めているのではないでしょうか。

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これは何口か食べた後の掘り起こされたプリンです。
その崖っぷちをさらに切り取っていきます。


掘りこされた塊がぷるんと震えます。
プリンの魅力を動きで再現した手の込んだ作画。

固形物を削っていく過程を楽しむのもプリンの醍醐味です。
つるつるの笑顔がまだ半分以上残っている状態ですが、そのうちだんだん泣き顔になっていきます。
なんだかサディスティックな気持ちになってきました。


食べるところを見てみると、これもプリンならではの面白い食べ方をしていますね。
スプーンは口先まで持っていくだけです。
プリンにキスをするように口をつけ、あとは吸引力で吸い込んでいます。


唇の内側をつるっと通るときの感触も含めて、プリンの食感を楽しんでいるのでしょう。


つづいて虎子がシャケおにぎりを食べます。
虎子も校則を守らず髪をオレンジに染めてイヤーカフスをつけています。
おまけに乱暴者なので、虎子の理屈からいえば彼女自身がこのときプリンを食べてないのは、確実にヤンキーだからです。



この食事シーン。
鏡に映したように対称になる構図で、わざわざ同じ動作を描くという手の込んだことをしています。
潮はまた同じ食べ方をしていますね。



食事しているふたりの背後の青い空が実に気持ちが良いです。
雲もゆったりと流れ、少ない会話をはさみながら、あとは彼女たちのけだるい咀嚼だけで時間が過ぎていきます。
ここは街中ではありますが、空を見上げるアングルだと、まるで高原の遠足のお弁当の時間のようです。


さて、食べ終わると虎子が衝撃のひとことを・・・。

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「さ、学校いこ!」

完全にサボるつもりだった潮はこれに驚きますが、
さっさと行ってしまう虎子に釣られて学校へ向かいます。

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虎子は難攻不落の城をまたひとつ落とし、仲間を増やしました。
彼女を中心とした梁山泊が完成する日も近そうです。





...おまけ(作品の感想と解説)

■背景美術の魅力

この第5話の後半は、アニメ版『ヒャッコ』の中で私がいちばん気に入っているエピソードです。
それは、前回も紹介した『ヒャッコ』の魅力である「青い空」がもっとも素直に表現されているエピソードだと思うからです。
この空を主張させた表現は、学校をサボる=屋内から光の世界に出るというシチュエーションによって成立しているといえます。


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朝のバス停。
待合所のスモークのかかった透明の屋根にすける空。
そして、そこからはみだす生の青い空がまぶしい。


このエピソードではとくに感じられることなのですが、
『ヒャッコ』の主役はもちろん快活な魅力をもち人の輪の中心にいる虎子なのですが、
もう一人主役を挙げるとそれば、それは人物ではなく背景じゃないでしょうか。

最近のアニメの色彩設計は彩度を下げて落ち着いた雰囲気を出す傾向にありますが、
ヒャッコでは(これは一昔前の”萌えアニメ”で多く見られた手法だと思うのですが)彩度をギラギラにあげることで、落ち着いた雰囲気を出すことに成功しています。

高い彩度と、空気遠近法でかすんだビルや山の遠景。その向こうには濃紺の空。
影の部分には青を混ぜてブルーのフィルターをかけているかのような見栄えです。
この画法により、澄んだ空気が感じられ、清涼感をいやましているように思います。


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交通量がまばらな市街
むこうには山の稜線が見える



この作品は、九州の地方都市を舞台にしているようですが、山並みが近くにそびえる市街の様子は東京などの都会にはない風情があります。
その独特の空気を表現できている背景美術の効果が、作品全体を一段階高いところに押し上げているように思います。
それは「縁の下の力持ち」と呼ぶような控えめなものではなく、画面の前面にでて主張されている番組のもうひとつの「顔」であり、
番組の中心に位置する芯のような役割になっているのではないでしょうか。

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通りの向こうのビルでさえ空気遠近法でかすみ
下のほうは見えなくなっている

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大通りの先に見えるのはやはり山の端

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青い空を背景にそびえるカラオケ店
窓に映る雲までがゆったり移動している

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鉄橋のかかった河

虎子達が食事をしている運動場のちょうど背面にある河です。
今回紹介した食事シーンでは、冒頭にある場面転換後の状況説明ショットでいきなり運動場を描かずに、その背面から描いています。
河の水面にはビルが逆さに写り込み、そこをアップで狙ったように画面いっぱいに描きます。
このことにより、虎子たちが食事している場所が360度の視野と空間の広がりを表現できています。
さらにここではのどかな景色の広がりを余さず写すように、カメラがパンしていきます。

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川面に写るビル群

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河を背にした運動場
散々背後の景色を描いて外堀を埋めた跡にようやく出てくる本丸の運動場。
ここでも彼女らの眼下に広がる運動場の広さを伝えるために、ぬかりなくカメラが右にパンしていきます。


実際にはこのくらい広い背景画です。
左上には入射光というこだわりも見られます。

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カメラが上方にいくにつれ、前方のビル群が違う速度で下がっていく

このカットでは、「密着スライド」(※)という技法を使い、多層的にレイヤー分けした近景のビル群と遠景の山の画を、速度をずらして動かすことで、奥行き感を出しています。

※密着しないスライドもあって、それは「多段マルチ」を使ってスライドさせるという手段です。
これは遠景と近景のピントをずらすことでリアルな奥行きを表現できます。
昔はマルチプレーン撮影台という大掛かりな機材を使った面倒な撮影だったのですが、現在のアニメではデジタル撮影によって多段マルチの表現を簡単に再現できます。
立体的な表現のために生まれた「多段マルチ」ですが、
このカットでは、あえて近景にも遠景にもピントがあったままスライドすることで、空間の広がりを表現しているように思います。

エフェクトやカメラワークなど、このシーンで使われているこれらの技法は珍しいものではなく、ありふれたものですが、
ここでは絵の技法に加えて、こうした演出上の技法を駆使することで、この世界の広がりや立体感を表現し、さらには流れる空気や時までも表現できているように思います。

時空間を支配して操るということは、演出家にしてみればキャラクターに命を吹き込むのと同様に、まるで神様になったような快感があるのではないでしょうか。
そういったアニメ演出の醍醐味を垣間見せられたように思える回でした。

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