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じゃりン子チエ 第4話 「テツの薬はゴロンパー」



■チエちゃんの気前
  
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今日は大晦日。
こんな日も、チエちゃんの店はいつも通り営業していますが、店内も大晦日ムード。
帰省の話をしている客たちにチエちゃんが言います。

「おっちゃんたちに一杯ずつおごったるわ」
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「なかなかサービスええやないのチエちゃん」

「そのかわりまた来年もひいきにしてや」

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「わかってるがな チエちゃんの焼くホルモンは美味いしな」

足元では小鉄が空腹を訴えてます。
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「わしゃ腹減った なんかクレ」

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「小鉄 お前もうちの焼いたホルモン美味しい思うか」

売り物ですが、小鉄にもホルモンのおすそわけ。



思いがけずホルモンにありつくことのできた小鉄。
食べてるときの小鉄はとても幸せそうです。

 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

このシーンは、TVアニメ『じゃりン子チエ』のなかで、
私がかなり気に入っているシーン。
というのも、ここではチエちゃんが気前のいい商売上手に描かれているからです。

原作にこのシーンはなく、
のちに似たようなシーンはあるのですが、
そこでは商売上手というよりも、せちがらいぼったくりの店という印象さえうけます・・・
(そのシーンはあとで紹介します)


今回の気前の良いチエちゃんは、アニメのオリジナルであり、
作品のカラーに関わる重要な追加要素といえます。
そこにはチーフディレクターの高畑監督の意思が加わってるのではないかと思われます。




■ 親子三代・年越しそば


チエちゃんは今日が仕事納め。
店が終わるとさっさと片付けて、年越しそばを食べにおじいおばあの家に行きます。
親子水入らずで年越ししようと思っていたテツは、チエちゃんが実家に行くと知ってがっかり。
テツも呼ばれてるので仕方なく一緒に実家へ。

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置いていかれると気づいた小鉄が
「ワシも蕎麦食いたい」とニャーニャー騒ぎます。

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小鉄もヒモでつながれて、連れて行ってもらえることに。
小鉄は本来こんな扱いを受けて黙っているようなタマじゃないんですが、
蕎麦のためならとことん黙ります。
飼い猫が板についてきましたね。

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「おばあはん おいしいわぁ」
「そうかおおきに」

親子三世代揃っての年越しです。
お蕎麦をすする家族の輪に、小鉄が混じってるところがなんとも良い風景ですね。

しかし、その輪に入っていけない者が一名・・・。
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バツの悪そうなテツが、はじっこで紅白を見ながら蕎麦を食べています。
もともとテツは居心地の悪い実家には寄り付かない男なので、このお呼ばれにはかなり不機嫌。

テツが蕎麦を食べるところは、劇場版には劣るもののなかなか良い作画です。



「ちょっともうまない」

そりゃ肩身の狭い思いで食べる蕎麦は美味くはないでしょうね。
なんで肩身が狭いのかをいっぺん考えたほうがいいと思うのですが、考えたことがないからテツなのでしょうね。
「シラフでこんな生き方できるから怖いねん」というチエちゃんの鋭いセリフが思い返されます。


そんなテツはほっといて一族の団欒です。
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おつゆも飲んで

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「ごちそうさま」
綺麗に平らげてる小鉄が可愛いですね。
あれだけ食べたがっていた蕎麦を食べられてニコニコ顔。


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さてここでアニメオリジナルの追加シーンが入ります。
番組初期のこういう細かい追加描写は、ことごとく秀逸なので、
こういうところが高畑監督の仕事だと思われます。

チエちゃんとおばあがふすまの奥に消えると、
おじいが、この機を待っていたかのようにテツに話しかけます。

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「お前おかわりは」
「まずいけど食ったろうかな」
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おじいが自らおかわりをつくりに立ちます。

「なんでもいいからもう一杯くれ」と、これは中年男が親に向かっていう言葉じゃないのですが、
この父親は息子には甘いのです。
いわれるままにおかわりを用意しに行きます。

テツは育て方が悪かったと、チエちゃんがこれまた鋭い分析を作中でしていますが、
気の強い暴力的な母親と、気の弱い甘い父親。
テツというろくでなしは、このふたりの合作であるわけです。

その片棒である父親。
チエちゃんのおじいはんのテツへの甘さは、物語の冒頭からそうでしたし、
その後もことあるごとに描写されていますが、
この短い追加シーンからは、なんともいえない地味なリアリティで、この父親の甘さが伝わってきます。
「おかわり」というさりげない食の描写で、親子の関係を浮かび上がらせているところが絶妙ですね。

(追加シーンここまで)

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さて、ふすまの向こうでは、
今日仕事で来れなかったヨシ江はんが置いていった包みを開けています。
中身は手作りの服。チエちゃんのだけでなくテツの服もあります。

ヨシ江がつくってくれたオーバーとも知らず、はしゃぐテツ。

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「お年玉も忘れないでね」

強烈な四十手前のおっさん。
ヨシ江はんは、本当にこの男にはもったいない女性だと思います。



■ 風邪ひきのテツ


さて今回、テツは風邪をひいてしまいますが、
夢の中で寒気を感じています。

本能の塊のテツは、食べ物の夢を見ることが多いようですが、
こんなときでもやっぱり食べ物の夢。

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なぜか夢の中でテツは、裸で雪の中をさまよっています。
そこにでてきた暖かそうな風呂は、のぞくとからっぽ。

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浴槽の底で嫁と娘がコタツで鍋をやっています。
しかしテツはコタツに入れてもらえません。


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「チエーわし寒い死んでまう~」

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テツを置いたまま、コタツは宙に浮いて飛んでいってしまいます。
「チエーさむいー」
「ヨシ江ー待ってくれー」

テツの深層心理には、いつかふたりに愛想をつかされて捨てられてしまうという恐怖があって、
それがこんな形になって夢にでてくるのかもしれませんね。

そう考えるとヨシ江はんの家出は意味深です。
家出のきっかけは、テツが「出て行け」といったのをヨシ江が真に受けたかららしいのですが、
これも本当は気の弱いテツからすると、捨てられる前に捨てたるというやけっぱちな態度ではないのかと思えます。
このことはのちに出てくる花井拳骨が、テツとヨシ江の関係を語ったときの「コンプレックス」という言葉からも伺えますね。

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今回、テツが風邪で寝込んだのはかわいそうですが、
周囲はこれを好機とみて、夫婦が寄りを戻す口実に利用しようとします。
ヨシ江もこれには乗り気。

「そうや あれで根はええやつなんや」
落としどころを決めようとしている大人たちのうしろで、チエちゃんと小鉄だけが冷静に事を見ています。

「あんな甘いこというてるから傷つくねん」

そしてチエちゃんの読みどおり、今回の大人たちの期待はテツの裏切りの前にあっけなく崩れ去るのでした。
テツにはヨシ江はんの看病よりも、おいちょかぶのほうがよっぽど効くようですね。

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 ゴロンパー(568でカブ)


■ チエちゃんの気前 (黒バージョン)


今回紹介したチエちゃんのサービスシーンと対になっている、逆のバージョンです。
黒バージョンと書きましたが、こっちが原作にある本家のシーンですね。

このシーンがある第8話では、家出していた母親がついに帰ってくることになる回なのですが、
そのせいで、このときのチエちゃんはニコニコしっぱなし。

彼女は以前、お母はんに対して、まだ夫婦の寄りを戻すのは早いと釘を刺してましたが、
やはり親子三人一緒に住めるのはうれしいのでしょうね。

それはいいのですが、問題は商売のほうです。


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自然と顔がにやけてくる幸せそうなチエちゃん。
その足元では小鉄がホルモンの串にしゃぶりついています。
普段はこういうことはないのでしょうが、
上機嫌のチエちゃんが小鉄に大盤振る舞いをしている様子。




「小鉄~ どんどんお食べ」
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猫なで声でホルモンをさらに振舞うチエちゃん。
小鉄もこの幸運に大喜び。

嬉しそうに食う小鉄がかわいいですね。


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そして卓には一級酒がドンと置かれ

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「おごりよ ウチのおごり!」

客にも気前よく振る舞いだしました。

しかし客のリアクションがどうも妙です。

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「やめとけ この前そんなこと言うて後できっちり勘定に入っとったど」

それは聞き捨てならない話ですね。
ですがチエちゃんが笑顔で言うのです。

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「やーねえ貧乏しすぎて根性まで曲がっちゃって」

そこまでいうならと、客たちは、めったにありつけない一級酒を飲み始めてしまいます。
しかし、カウンターの下では小鉄がそろばんをはじいて勘定をしっかり計算しているのでした。

帰り際に客たちがぼやいています。

「みてみい、さっきの酒勘定に入ってたやないか」
「チエちゃん ニコニコしてる割にしっかりしてるなあ」


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「そやけど猫が計算しよったからなあ」
「たまらんなあ・・・」


「おおきにまたきてやー」と笑顔でチエちゃんに送り出されてるのに、
客の顔は喜んでませんね。
客相手のサービス業で、これはちょっとひどいです。

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このシーンは、上の空のチエちゃんが巻き起こすちょっとした騒動であり、面白みのあるエピソードといえますが、
原作者のはるき悦巳先生は、それ以上の情報をここに盛り込んでいるようにも思えます。


アニメでは省かれていますが、
原作漫画で、テツは以前自分で店をやったときに、客から高額の料金をぼったくって警察沙汰になっています。

さらに原作では(アニメ化された部分でもありますが)、
チエちゃんがテツの遺伝子をしっかり受け継いでいることが要所要所で描かれています。

娘のチエちゃんは、普段はテツと違ってしっかり者のまじめな子ですが、ときたまテツと似た行動をとってしまうことがあり、
それこそがチエちゃんの重要なキャラクターになっているともいえます。
ですから、このぼったくりまがいのシーンは、キャラクター的には非常に筋道が通ってる順当なエピソードといえるのですが、
それにしても、少々せちがらいエピソードに思えます。

このことは、はるき先生自身が下戸だということと、無関係ではないかもしれません。
私など、チエちゃんの店で一杯やってみたいなあと思って見ているものですから、
つい客の目線でみてしまって、こういったシーンではちょっといやな気分が残ります。

ここでは、そういった不快感への配慮としてか、「猫が計算しよったからなぁ」というセリフがありますが、
おごりのはずの酒が勘定に入っていたのは、少なくともこれで二度目ですから、
こうなると、こういう手口をよく使う常習犯ではないかとすら思えてきます。

こういうことが二度もあったら、その客は、こんな店でもう一度飲みたいとは思わないでしょうね。

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もともと原作でのチエちゃんの商売の姿勢は、コミックス後半のアニメ化されていない部分も含め、
かなりえげつないところが目立ちます。

チエちゃんは、原作の初期からたくましい少女として設定され、
商売の描かれかたも首尾一貫されているといえるのですが、
ときおり描かれる黒いチエちゃんは、客の扱いもひどく、度を越えた節操のなさを発揮するため、
たくましさを超えて、単なる金の亡者のようにすら思えることがあります。


やはり、「損して得取れ」というのがナニワの商売の基本だと思うので、
このようなけち臭い商売よりも、第4話の冒頭で描かれた気前の良いチエちゃんのほうが私は好きですね。
おおかたの視聴者も同じように感じるのではないでしょうか。

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 ★ 「食」の多面性

ところでこのシーンには、こうしたことへの配慮からなのか、アニメだけの追加シーンがあります。
そこには、第四話で気前の良い商売をするチエちゃんのエピソードを挿入したのと同じ意図が垣間見えます。

小鉄にホルモンをふるまってるチエちゃんの描写がまるごとそれで、
原作の小鉄はホルモンをもらえることもなく、そろばんをはじいてるだけ。

小鉄が、普段食べられないホルモンを大盤振る舞いされて、むしゃむしゃ食らっているという描写は、
転じて、チエちゃんが一級酒を客に振舞ったのも(小鉄にそうしたのと同じに)本気の気前のよさからであり、
小鉄があとで勝手に勘定を加えたので、チエちゃんは本当はケチな商売はしていない、というストーリーに説得力を与える役を担っていたと思います。
このシーンがあるとないとでは、チエちゃんへの印象もかなり変わってきます。

このように、なにげなく描かれる食事シーンにはしばしば、見た目以上に重要な意味が詰まっていることがあるのです。

今回のこのシーンでは「食」が「おごる」という経済を介したコミュニケーション行動に変換されているところが特徴だったのですが、
そこからさらに考えてみると。「食」が重要なシーンに多用される理由がみえてきそうです。
それは、「食」が人間の基本的な本能に直結している行為だからであり、
それゆえに、「食」は、食そのものだけでなく、経済活動や文化的活動など、すべての人間的活動にまんべんなくリンクしていて、
その経路をさらに辿れば、一回りして「本能」に訴えることにもなるという、作家にとっては実に魅力的なサイクルがあるのではないかと。
そして、「食」はこうした循環する経路のツボにあたるものなのではないかと、そんな風に思うのです。

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